みなさん、日本の伝統行事である五節句をご存じですか?
重陽(ちょうよう)の節句(菊の節句)は、旧暦で五節句を締めくくる行事として平安時代から日本人に親しまれてきました。
五節句は、七草、桃、菖蒲、笹、そして菊とその季節の植物から生命力をもらい、お祝いと共に邪気を祓う行事が由来ですが、桃の節句、端午の節句などに比べると、菊の節句は時の流れとともに馴染みの薄い存在となってしまったのが残念・・・ということで、渾身のご紹介!
菊は元は薬草として渡来し、重陽の節句では、無病息災・不老長寿の願いを込めて菊の花についた朝露を飲んだり、花の香りが染みた真綿で顔や身体を拭ったり、花びらを浮かせた菊酒を飲んだり…もちろん菊の花を飾って、菊づくしの贅沢で優雅な季節のお祝いをしたそうです。
今回は、風情ある菊の節句の意味を今一度捉え直し、贅沢ではなく、さりげなく暮らしに溶け込むような菊の花の飾り方を ご紹介します。
ポイントを押さえていただければ、きっと今までの菊のイメージが変わりますよ!
■素敵に飾るためのポイント
①メインとなる菊は1~2品種に絞り、季節の草花を組み合わせてシンプルに飾ります。
②器選びがキーポイント!ご家庭にある水漏れしない器で色々試してみてださい。きっとお似合いの器に出会えるはず!!
今回利用した器を参考にしてみてくださいね。
・シノワズリ風な瓶(紹興酒が入っていたビン)で和風でもない東洋の神秘的な雰囲気に。
・一輪挿しできる小瓶(写真はパリで購入した香水瓶)でパリの狭いアパートメント暮らしで花を飾っているイメージ!?
・キッチンにあるガラスジャー(100enショップなどでも販売してます)でカジュアルに。
・ガラスのサラダボール(ナチュラルキッチンで購入)もカジュアルですね。
③さらに小物をプラスしてみましょう。季節の果物を添えたり、クロス、下皿などと合わせれば、暮らしに溶け込む
インテリアコーディネートに仕上がります。
■菊を選ぶ時のポイント
菊の咲き方は、大きく分けてディスバッドマム(一輪咲きで大輪タイプ)とスプレーマム(枝分かれして咲く小輪タイプ)がありますので、家にある器をイメージしながら選んでくださいね。
【ディスバッドマム】
存在感があるお花なので一輪でも様になりますし、草花を加えると季節感が増します。
・縦にスッと活ければ、凛とした東洋風(写真左枚)。お月見にも似合いそうなアレンジですね。
・草花と束ねてブーケっぽくすると、ヨーロッパ風に(写真右から2枚目)。
・シンプルなガラス瓶があれば、アイビーなど蔦系の葉っぱを瓶に巻いてみましょう、お花との一体感が出て、より
ナチュラルなイメージになります(写真右端)。
【スプレーマム】
品種は1種に絞り本数で調整してみましょう。いろいろな品種を混ぜると逆に仏花のイメージになる場合があります。
・1本を枝分かれしてるところでカットし3輪に、空いた香水瓶に挿してみました(画像左)。
・シックなワイン色のマムをまとめて、季節の小花(ケイトウとワレモコウ)をピョンピョン出して、
同色のブドウを添えれば、そこはもう秋のシーンに(画像右)。
切り戻しして、茎が短くなってきたら・・・水中花で楽しむのもお勧めです。
ワンプレートのご飯を盛り付けするように、お花も彩りよく盛り付けてみてください。
天然素材のクロスの上に季節の果物も添えてテーブルコーディネートはいかがでしょう。
ご自宅で、素敵な重陽の節句の宴が始まりそうですね。
■菊のお手入れ
最後に、菊のお手入れのコツを簡単に説明します。
①水揚げで茎を切る時は、なるべくハサミを使わず両手を使って一気に折ります。
繊維が切れない時はねじってみてください。茎の断面がささくれることで吸水面が広がり、水あげが
良くなります(写真左2枚)。
②余分な葉は、つけ根からきれいにとりのぞきましょう。
菊は花持ちは良いですが、葉が多く蒸れやすいので、不要な葉は間引きをし、水に浸かる葉は小さい葉まで取り除きます。
葉をとる時は、茎のつけ根から手でやさしくもぎとるか、ハサミで切ります。
茎に残った凹凸もハサミの先で丁寧にカットすると、他の花に絡みませんし、見栄えも美しくなります(写真右2枚)。
③キクは水の吸上げ量が多い花なので、たっぷりと水を入れた器に飾ってあげましょう。
水替えは他のお花と同様、毎日こまめにし、茎にぬめりが付きやすいので手で洗い流し、器もきれいに洗ってください。
私たちの身近に存在している菊。重陽の節句の意味や由来に思いを馳せ、他の節句のように形を変えながらも私たちの生活に溶け込んでくれたらと思います。
世界に広がる感染症の終息を願い、無病息災や不老長寿を願う節句の意味を今一度捉え直して、今年は自宅でささやかに菊を愛でてみませんか。
〈今回使用した花材〉
●ディスバットマム
「アナスタシアグリーン」グリーンのスパイダー咲き(写真左)
「ピンポンマム」黄色くお月様みたいな形(写真中)
●スプレーマム(写真右)
●その他の草花
ハツユキソウ、ワレモコウ、セロシア、ヒペリカム、スモークグラス、ポリシャス、アイビー
【菊の豆知識】
●菊(学名:Chrysanthemum) 。
異国で品種改良された洋菊が学名から「マム」の名で万国共通に広がりました。ちなみに洋菊とは、輪菊と小菊
(白、赤、黄色の一般的なお供えの菊)を除く花を指します。
●菊は、桜と並ぶ日本の国花。パスポート、五十円玉、皇室の紋、国会議員のバッジなど菊があしらわれたものは意外と
あるものですね!