昨年スタートしたMAGAZINE「お花の話」では、花のお手入れ方法や季節のイベントに絡めたお花の楽しみ方を月2回、紹介してまいりました。
今年は、「花」そのものにフォーカスし、その魅力を知っていただけるよう、月前半の回では旬の切り花一種を紹介してまいります。
お花と向き合い”ありのままの姿”を知ることが、花とのつきあい=花のある暮らしに繋がることでしょう。
野菜や果物を買うように、お花をさりげなく暮らしに取り入れていただけたら・・・そして、献立を考えるように、どんなお花をアレンジして飾ろうかしら?とイメージを膨らませると、花選びからワクワクしてきますよ!
今月は早春に楽しめる球根花の中でも世界中で親しまれている花「チューリップ」です。
さまざまな色や愛らしい花姿で風に揺れる様は、春の訪れを感じさせてくれますね。
光や温度で花びらが開いたり閉じたり、茎が毎日少しづつ伸びていったりと非常に「いきものっぽい」切り花です。この生命力の強さも魅力のひとつなのではないでしょうか。
花壇では4月頃が見頃となりますが、花市場では12月から3月に約5000品種以上!あるというバリエーション豊かなチューリップが並びます。
まさに今が旬!ぜひ、手に取り、チューリップと向き合い会話してみて下さい。
【基本情報】
『チューリップ』 (和名:鬱金香 うこんこう)
・原産地/トルコ 生産国/オランダ
・日本の主な生産地/富山県、新潟県
●花名の由来
語源は、原産地のトルコ語でターバンを意味する「Tulipan(チュルバン)」からきています。花弁が重なり合うように咲く姿が ターバンに似ていますよね。
●花言葉:「思いやり」「名声」「愛の告白」
チューリップの花言葉の由来には、あるオランダの物語があります。
三人の騎士が美しい娘に求愛し、彼らはそれぞれ自分を選べば王冠(名声)、剣(強さ)、財産(資産)を彼女に与えようと言いました。一人を選べば残りの二人を不幸にしてしまうと思った娘は、女神フローラに頼みチューリップに姿を変えました。三人の騎士はそのチューリップを大切に育てたということです。
この物語から、チューリップの花は王冠を、葉は剣を、そして球根は黄金(財産)を表しているといわれています。
スッと伸びた愛らしい姿や花言葉からも、この時期、特別なシーンの贈り物にもおすすめですね。
【咲き方】
チューリップといえば、基本情報の写真(黄色のチューリップ)のようにシンプルな一重咲を思い浮かべますが、切り花の世界では品種改良が進み、咲き方や色の種類も豊富で選り取り見取り。
代表的な咲き方をご紹介します。ネーミングからも想像してみるのも楽しいですね。(写真上・左から)
・八重咲き:幾重にもなる花びらところんとボリューム感がある咲き方。開花すると、バラやシャクヤクに見間違えるほど華やかに咲きます。(左)
・パロット咲:パロットとは英語でオウムのこと。鳥の羽のような花弁が特徴的。(中左)
・フリンジ咲:花びらのふちがフリルのようになってる可愛らしい咲き方。(中右)
・ユリ咲:スッと尖った花弁がユリのようでエレガントな咲き方。(右)
・クラウン咲:王冠をイメージさせる咲き方。(今回お写真なく、すみません)
【お手入れ方法】
チューリップの葉は肉厚で水分を多く含み蒸発しやすく、吸水力が強いお花であることを念頭にお手入れしましょう。
・水に浸かる余分な葉は、取り除きましょう。(写真左)
葉の根元にハサミかフローリストナイフの刃を当て、横方向に浅く切れ目を入れます。切れ目を茎まで深く入れると、そのまま折れてしまいますのでほんの浅めで大丈夫です。
切れ目に沿って、手で葉をゆっくりとちぎり取ります。
・茎を切るときは、水が吸いやすいように切口を斜めに切ってあげてください。
・花瓶の水の量は、多くても半分程度にしましょう。水をたくさん吸いますが、茎が水に浸かりすぎると痛む原因にもなります。お水の量をこまめに見てあげてくださいね。
・光と温度に敏感に反応する性質があるため。太陽の当たる窓際や暖房のきいた部屋に置くと、一気に開きます。長く楽しみたい場合は、気温が低めのところをおすすめします。
【飾り方のポイント】
■贅沢にたっぷりと生ける
旬の時期だからこそ、ちょっと贅沢に…束ごとわさっと生けてみましょう。
光を浴びてるかのように、片側だけに流れるように生けるだけで様になります。
チューリップは、生けてからも自由に動いたり伸びたりするのでバランスが崩れてきたら、切り戻したり花瓶を変えたりと少し手直ししてあげるとよいでしょう。
茎が太いので花瓶の口は広めがお勧めです。
■チューリップ数本と春の花を一緒に
手軽に飾りたい時、愛嬌あふれるチューリップには器にも遊び心を加えるとよいでしょう。
上の写真は、トルコで購入した花瓶(左2枚)とクリスチャン トルチュ逸品のディアボロという花器(右)。
同じ花材でも、花瓶を変えるだけで、世界観もかわりますよね。
今回はチューリップと相性のよい春花スイトピーと一緒にふんわりと春風が吹き抜けるなイメージで飾ってみました。
■一輪と向き合う
ゆるやかにカーブしている表情を生かして、手近にあるグラスや空ビンにぽんと挿したり、短くなったら器の縁に添わせて円を描くようにいけてみましょう。
*茎が柔らかいので、花の重みで頭が垂れてきたら、棚の上など高いところに飾り、チューリップが何かを覗き込んでいるような姿を見上げて楽しんでみてもよいですね。
こぼれ話・・・
発祥の地トルコでは、国花として崇拝されており、街中やモスクなど、いたるところにチューリップモチーフが装飾され、それはそれは圧巻です(以前トルコへ旅をした経験談)
お土産の品々にもユニークなチューリップ柄がたくさんあり、見ているだけで微笑ましいです。
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チューリップを飾り、一足早い春の訪れを楽しんでみてはいかがでしょう。
すぐそこに春はやってきてます☆