2月にご紹介する花は、うららかにカラフルに☆春の息吹きを感じる「アネモネ」です。
この時期、花屋さんの店頭を彩り、はっと目に留まる一輪の花アネモネ。
レース模様の豪華な襟に囲まれたようなお顔がエレガントで可愛らしい花姿ですが、実は、きれいに色づいた花びらのように見える部分は萼片(がくへん)で、花芯の紺や黒白の部分が花びらになります。
この萼片を夜には閉じ、朝の光とともに開いて、開閉を繰り返しながら成長していくようです。
アネモネに導かれながら、ひと足先に春の足音を聞いてみましょう♪
※MAGAZINEでは、以下、萼は花と表現させていただきます。
【基本情報】
『アネモネ』 (和名:牡丹一華、花一華、紅花翁草) ・キンポウゲ科アネモネ(イチリンソウ)属 ・原産地/ヨーロッパ南部や地中海沿岸 ・日本の主な生産地/長野県
●花名の由来
アネモネの花は春風が吹く頃に咲き始めます。そのため、ギリシャ語で「風」という意味を持つ「anemos」が元となり、アネモネの名前がつきました。
英名も「風の花」を意味する“Wind flower”と言います。
●花言葉「あなたを愛します」「はかない恋」
白いアネモネの花言葉は「真実」「期待」
紫のアネモネの花言葉は「あなたを信じて待つ」
赤のアネモネの花言葉は「君を愛す」
花言葉はギリシャ神話が由来のようです。
アネモネが登場するギリシャ神話を2つ紹介したいと思います。
〇神話① 西風の神ゼピュロスに愛された少女
春の訪れを知らせてくれる西風の神ゼピュロスは、妻である花の女神フローラの侍女の少女アネモネに恋をしてしまいます。
嫉妬にかられた女神フローラはアネモネを花園から追い出してしまいますが、諦めきれないゼピュロスはアネモネを哀れに思い、少女の姿をそっと花に変え、花園に留めてたと言われています。
〇神話② アフロディーテの恋人アドニスの血
美と愛の女神アフロディーテが息子のエロースと遊んでいるときに、間違って恋の矢がその胸に刺さってしまいました。
その時に通りかかったのが、青年アドニス。アフロディーテはアドニスに夢中で恋をしました。
しかし、以前に女神アフロディーテの恋人だった軍神アレスが二人の関係に嫉妬し、森で遊ぶアドニスとアフロディーテにイノシシをけしかけました。その結果、青年アドニスはイノシシの牙にさされ命を落とし、その時に流れ出た血から真赤なアネモネが咲きだしたと言われています。
どちらの悲恋も儚く美しい神話ですが、西洋では“愛の象徴の花”として今も愛情表現のプレゼントとして人気の花になっています。
【花の色と咲き方】
花の色には赤、白、紫(青)、ピンク、複色 (黄色オレンジ系がないのが意外です)があります。
紫色のアネモネはベルベットのような花芯と深い紫が相まって、とてもミステリアスな印象に、白いアネモネは花びらに触れることをためらってしまうくらい清楚で可憐なイメージになります。花の色が変わると印象まで変わってみえるので、選ぶときのポイントのひとつかもしれませんね。
以前、白色に芯黒の品種で見た目がパンダカラー、その名も「パンダ」というアネモネが流行った時期があり、ヨーロッパで人気の色でした。
当時の日本では白黒カラーは仏時のイメージが強くあまり浸透しませんでしたが、今ではお祝いの席のブライダルでも使われるようになり、ラグジュアリーな装飾にも人気のようです。見た目もユニークで可愛らしい品種、ぜひ探してみて下さい。
咲き方には、一重咲と八重咲があり、花径が10cm以上の大輪から3cm程の小輪まで様々あります。
独特なフォルムと豊富な花の色。アネモネの花にはいつまでも眺めていたくなるような不思議な魅力がありますね。
【花を選ぶときのポイント】
アネモネを選ぶときは、茎が太くしてしっかりしたもの、花首(襟巻のような天葉から花の間の茎)が間延びしていないものを選びましょう。しっかり開き、日持ちするものが多いです。
つぼみは開きやすいので、花が閉じた状態のものを買うことが大切です。花びらにしっかり色がのっていて、上を向いているものを選びましょう。
【お手入れ方法】
出回る時期は寒いので、比較的もちは良いです。
ただし、春花によく見られる特徴ですが、光や温度に敏感なため花が開いたり閉じたりします。前回のチューリップに似ていますね。
・できるだけ涼しく、日が当たらないところに飾りましょう。エアコンの風が直接当たるところも避けます。
・水あげは良く茎が柔らかいので、切口はまっすぐ切ってで構いません。水に浸けていると、たまに切口が裂けて反り返ってきてしまうことがあります。
その場合の対処法は、裂けてないところまで切り戻し、茎元をセロハンテープ巻くと防ぐことができますのでお試しください。
・花器の水の量は少なめにします。茎の中が空洞のため、水に浸かった茎が腐りやすいという性質があるためです。気を付けてこまめに水替えをしてください。
【飾り方のポイント】
アネモネをより美しく飾るコツ~一種類でも映えるアネモネ
春の花なので、ほかの春の花と合わせても良いのですが、アネモネ一種類で飾るのもおすすめです。色ミックスでも単色で飾っても十分な存在感と主役感があります。花そのものが非常に造形的で絵になり、ほかの花の力を借りる必要がないほど。(写真上左側2枚)
1輪でも十分に美しく、インパクトがあるアネモネは、組み合わせるならば春花を数本と葉ものを少し添えるくらいにすると、その個性が生きてきます。(写真上右、下中央)
合わせる花は、アネモネと違う形状の花を選ぶとより映えてみえます。(写真上右、下左、右)
アネモネは基本的に上を向いて咲く花です。一般的にアレンジをするときは、花同士に大きく高低差をつけますが、アネモネの場合はあえてはっきりした高低差をつけず、開いた時を考慮し花顔1つ分ほど出して、同じくらいの高さで並べてみるのもよいですよ。
こうすると上から見たとき、ぎゅっと集まった花顔のおかげでインパクトが一段と強まり、いっそう印象的に見えます。
この季節だからこそ楽しめるアネモネ。1輪お部屋に飾って春を呼び込みませんか。