春から夏へ、若葉から青葉へ、季節の移ろいのなかで、おりおりの花木(かぼく)を愛でる日本ならではの文化。それは私たちの生活に溶け込み、潤いをあたえてくれます。
代表的な花木としては、春は梅や桜、初夏は紫陽花、秋は金木犀、冬は椿などが思い浮かんできませんか。花を見て、「ああ、もうこの季節になったんだな」と季節を感じたり、大切な人が好んでいた思い出が蘇ってきたり…花木は花屋さんで買う切り花よりも身近な存在と言えるでしょう。
初夏を彩る代表的な花木のアジサイ。アジサイが咲き、青梅雨を受けた草木が葉の色を鮮やかにする水無月は、家でゆっくり過ごしたり、晴れ間には散歩をしたり、ちょっとほっとできる月。季節の花をさりげなく傍らに置いて楽しみませんか。
お花を長く楽しむためには、最初のひと手間が肝心です。今回は花木のなかでもこの時期手に入りやすいアジサイを例に「花木をきれいに切花で長持ちさせる方法」を中心にお話いたします。
繰り返していくうちに、お花のお手入れが生活に馴染んでくることでしょう。
【花木のお手入れ方法】
まずは生ける前の下準備が大切です。特に、丁寧な水揚げをすることにより、切花が長く楽しめますので実践してみてくださいね。
①余分な葉を取り除きます。
どの切花にも共通していますが、不要な下葉を取り除くことから始めます。
葉から発散する水分を減らし、花にまで行き届く様ににするためです。
また、葉っぱが花瓶の水に浸かったまま生けると、雑菌が増えて水も汚れやすくなるので、それを防ぐためでもあります。
②水揚げをする(枝物全般の水揚げ方法をいくつかご紹介します。その花木によって、使い分けましょう)
●パターン1 空切か水切りで茎を斜めにきり、中のワタを取ります。
アジサイの場合は特に水を好みますので、できるだけ角度を付け切断面積が広くなるように斜めに切り水の吸い込みを良くします。この時、導管を潰さないようにスパッと切ることも大切です。
茎の中のワタを取ります。斜めに切った際、茎の中に白っぽいワタみたいなものがあります。それを、ハサミの先などで、かき出すように取り除きます。
(見える範囲で構いません。手を傷つけないよう気を付けてください)
●パターン2 割る
茎の切口に縦にハサミを入れて、十文字に割り入れます。
この方法は、枝物全般に効果があります。草花のように横に切断できない太くて硬い枝物も、縦方向には比較的簡単に割ることができるので、お試しください。
●パターン3 切口を叩く
ハンマーなどで、茎の断面を軽く叩きます。繊維をほぐすイメージで叩くのがポイントです。ハサミで割るのが難しいものにも適しています。または大量にある場合、数本をまとめて叩けるので、手早く水揚げしたい時にもおすすめです
+α アジサイなど茎の中にワタがある花木→焼きミョウバンを使う
茎の切り口に焼きミョウバンを指ですり込みます。アジサイを新聞紙で巻いて、新聞紙が浸かるつかるくらいの水に1~2時間つけておきます。焼きミョウバンを使うことで、花の導管を柔かくすることができ、吸上げが良くなるのです。
パターン4 湯揚げをする
葉と花が付いている部分に湯気があたらないように新聞紙をまいて、バケツなどに熱湯を1~2センチほど入れて、30秒前後つけます。その後、直ぐに深水に2~3時間つけておきます。
(詳しくはMAGAZINE→「お花を長くたのしむための基本の水揚げ方法」をごらんください。
★紫陽花は、水がさがりやすいので、もしくたっとなって見えたら深水法か湯上げ方法が効果的なので、ぜひお試しください。
③花瓶に合わせて、茎の長さを調整して切り、生けます。
花瓶の水量は、アジサイは水が大好きなので深水(多め)にしましょう。
■アジサイで涼を楽しむ
アジサイは切花としても購入できますが、案外お値段が高めのものもあります。実は鉢物の方が種類も豊富でお手頃かもしれません。まずは鉢物のまま楽しみ、花びらが落ちたり弱ってきたら、切って水揚げをし、お好みの器にアレンジして飾ってみるのもおすすめです。
お部屋の中に、アジサイと合いそうな器がないか見渡してみてください。花瓶でなくても、お水が漏れない入れ物だったら何でも花器代わりになります、
料理するみたいに、お花をもりつけるような感覚でアレンジしてみましょう!
写真左:切花
写真右:鉢物
ガラスジャーにさりげなく
<使用した花材>
・アジサイ「姫アジサイ」
・レモンバーベナ
・ラベンダー
<器>
・ガラスジャー(保存瓶
プレートにこんもりと
*アレンジ方法は下記をご覧下さい。
<使用した花材>
・アジサイ鉢「レディマタハリ」
・アジサイ「姫アジサイ」
・カンパニュラ
・アルケミラモリス
・レモンバーベナ
・ラベンダー
・エレンダニカ
<器>
水盤(サラダボウルを代用)
アジサイや季節の草花・ハーブを盛り付けた涼やかプレート
青梅雨を受けたアジサイや草木が葉の色を鮮やかにする景色を水中花で表現してみました。
①アジサイの鉢物から採取した一玉は、茎を水盤のフチに花頭を引っ掛けられるくらいの長さに切り、切口は斜めに切り直してワタをとります。切り花のアジサイは、1本に枝分かれしている小玉が数個ついてるので、枝分かれしている根元から切り分けておきます。
他の葉物も、切口が水盤から飛び出さない程度の長さに切り分けておくと良いでしょう。
②葉物のエレンダニカで全体の流れを作ります。同時に花止めの役割も担います。
③一番大きいアジサイを水盤のフチに引っ掛けるように入れます。小分けにしたアジサイは、ふちにかけたり、そのまま水に浮かせたりして、全体感をみながら入れていきます。
④摘み取ってきたばかりのハーブは、水に浸かる葉は落とし、茎に切り込みをいれてアジサイの隙間に挿し込んでいきます。
⑤グリーンだけでもよいですが、鈴形の真っ白いカンパニュラをポイントにいれてさらに清涼感のあるアレンジに。
⑥水盤の水はたっぷりと張り、毎日水替えをしましょう。花を片手で押さえながら、水だけをこぼし、新しい水を横から注ぐだけでOkです。乾燥を防ぐために、上から霧吹きもしてあげると、より梅雨の世界が広がることでしょう。
***こぼれ話***
こちらは、とある紫陽花寺の手水舎にしつらえてあった水中花。粋な計らいにに感動しました。
ただポンポンと浮かべるだけで、華やぐものです。
Kumpuお花の定期便では、【緑とお花と器のハーモニーを楽しむ定期便・Green style】コースが始まりました。
庭から摘んできたお花をそのまま飾るように瑞々しい緑の葉とお花を束ねたブーケ。
花とグリーンが織りなす季節の彩りが、お部屋の時間と空間、そして心を豊かに。
今後、花木との組み合せもありますので、ぜひ参考にしてみてください。