平年よりも早く夏が訪れ、人間と同様に植物たちも環境の変化に驚いてるのではないでしょう。
「暑い季節は花のある暮らしをためらってしまう」という声も聞かれますが、そんなことはありません!
夏にこそ楽しみたい花もあり、花選びとちょっとした工夫でお部屋を彩ってくれます。
おすすめなのは、常夏の国…東南アジアなどの亜熱帯の地域にルーツを持ち生まれ育った花たちです。暑さに強く丈夫!トロピカルな色合いや不思議なかたちは、ほかの季節にはない楽しさがあります。南の国のリゾートホテルをイメージしたり、涼を感じる色を選んだり、水に花を浮かべたり、 暑い夏だからこその楽しみ方を探してみましょう。
今月は、沢山ある中でも、馴染み深く、手に取りやすいランの仲間「デンファレ」のご紹介です。
【基本情報】
『デンファレ』(和名)
・正式名称:デンドロビウム・ファレノプシス
・ラン科 セッコウ(デンドロビウム)属
・原産地:ニューギニア、オーストラリア北部
・日本の主な生産地:沖縄
・花色:白、ピンク濃淡、紫濃淡、ライムグリーン
1年を通じて出回ります。東南アジアからの輸入品が大半ですが、沖縄など国産品もあり、品質・価格ともに高価ではありますが、その特徴として輸入品より丈が長く、先端の方まで花が咲いているものが多いです。花は小輪ですがたくさん付いていて豪華な雰囲気、なんといっても日持ちがよいので、おすすめです。
今回使用しているデンファレも国産品「ジャックハワイ」です。
〇花名の由来
「デンファレ」は実は和名であり、「デンドロビウム・ファレノプシス」を略したもので、蝶が舞うような花姿がコチョウラン(ファレノプシス)に似ているデンドロビウムであることからつけられたと言われています。
「デンドロビウム」は、ギリシア語で「樹木」を意味する「dendron」と「生命、生活」を意味する「bios」を語源としていて、自生しているこの植物が樹木に着生する性質をもっていることにちなんで付けられました。
〇花言葉
「お似合いの二人」「魅惑」「有能」
デンファレの「お似合いのふたり」という花言葉は、洋ランの性質が由来となっています。ラン科の植物は、地面ではなく木や石にくっついて成長する性質があり、これを「着生植物」といいます。
この様子が「2人が寄り添っているように見える」ということで「お似合いのふたり」という花言葉がつけられました。
☆補足:ランが着生植物なのは、地球に誕生したのが遅かったからだといわれています。そのため、ランの原種が生まれたときには、すでに生育に適した環境は全て他の植物で覆われていたのだとか。
そこで生き抜いていくために、競争の少ない樹木の上に根付いたそうです。デンドロビウムの「思いやり」という花言葉も、着生植物で相手に思いやりを持って生活することに由来しているのです。
【お手入れの仕方】
・比較的強い花なので、水揚げは、茎の切り口を斜めに切って水に浸けるだけで構いません。
・花は下から順に咲いていくので、萎れるのも下の方からです。だめになった花は取り除きましょう。
・長く生けていると茎が黄色っぽくなり、痛んでくると溶けて嫌なニオイがします。こまめに切り戻し、黄色くなってきた茎は切り落としていきましょう。
茎が短くなってしまったら、残りの花だけを摘んでお皿などに浮かべたりと、最後まで楽しめます。
枯れたり、腐ったりした部分を早く見つけて取り除くのが、デンファレを気持ちよく楽しむコツなのです。
【夏に花を長持ちさせるポイント】
夏は気温が高く、締め切ったお部屋は温室の様に気温が上がってしまうため、生けた花も早く萎れてしまうこともしばしば。
花を長持ちさせる、ちょっとした工夫をお伝えします。
■日光やエアコンの風に当たらない日陰に置く。
■できれば、朝晩とマメにお水換えをする。茎の切り口の切り戻しも忘れずに。
■その際、水の中に少量の氷を入れる(蘭は温度が低すぎると萎れてしまう為、数個の氷で水が暖かくならない程度で大丈夫です)
■水の中に一滴程の漂白剤(キッチン用で構いません)を入れる。水の中に雑菌を増やさないことによって花持ちが良くなります。この方法は効果抜群です!
注)ただし、入れる際には洋服などに飛び散らない様に、十分に気を付けてくださいね。
【ランのある暮らし】
今回のおすすめ『白いデンファレ』
色は、淡いピンクや紫がメジャーですが、おすすめは白、そしてできれば国産品です。
白いデンファレだけを、白い花瓶に茎の流れを生かして飾ってみましょう。白いお花に白い器、見た目も涼やかなクールな空間が広がります(写真上左)。
そんなシンプルな花あしらいが似合うので、お手軽に生けれるのもこのお花の良さですね。
では、他の飾り方もご紹介していきましょう。
【飾り方】
〇デンファレと相性が良い器
・花瓶の口が小さいガラス瓶や陶器
・窪みのあるお皿
1本の茎にたくさんの花が並んで咲く花姿は、家にある空き瓶に挿すだけでも、凛とした姿がさまになります。茎の流れを生かして、一つの方向にエレガントに生けてみましょう。
花瓶の水は浅めにします。一輪で生ける場合は花瓶の口が細めのものを選ぶと茎が定まり安定しやすいです。水に浸かってしまう花は取り除きましょう。その花は水をはったお皿などに浮かべて、器の足元にそえれば、アレンジのパターンが広がります。
〇下の花が萎れてきたら、上の方の花だけを茎から切り離し、水をはった器に浮かべてみましょう。蔓系のグリーンをくるっと添わせて、涼やかなアレンジメントの出来上がりです。
飾り方は簡単ですのでご覧ください。(写真下参照)
<使用した花材>
デンファレ「ジャックハワイ」、リキュウソウ、ラベンダー
・水盤になるような器を用意して水をはります。
・蔓系のグリーン(今回はリキュウソウですが、アイビーやトケイソウなどもおすすめです))で輪を作り、茎の切り口の断面が水に浸かる様に、器に添わせて飾ります。
・デンファレの花の茎を短く切り、水面にそっと置き浮かべていきます。花が等間隔でまんべんなく浮いているよりは、グルーピングして間を作ったほうが、自然な風合いに仕上がります。
・最後に乾燥対策の為に、上から霧吹きをかけて、できあがりです。
デンファレは、花瓶に生けたり花束やアレンジメントを贈る以外にも、装飾花や花飾りとしても活用されます。
代表的な用途の1つが、「ハワイアン・レイ」や「フラワーレイ」などと呼ばれる、首からかける花輪飾りです。一度は見たことありませんか?フラダンサーが身に着けたり、ハワイ観光などで旅行者を歓迎するときに贈ったりするとき重宝される花なのです。
また、鮮やかな花色のデンファレは、トロピカルな料理の装飾にもぴったりです。南国の雰囲気を演出したときに、デンファレを添えてみてはいかがでしょうか。
この夏は“ラン”のある暮らしを楽しんでみましょう。