朝晩の暑さは和らぎ、鈴虫の音色が心地よく聞こえる9月に入りました。
植物の多くは、深い緑から次第に黄金色へ変化し、切花の世界でも秋色の花が人気になってきます。
そこで今月ご紹介する花は、ビロードのような質感とこっくりとした色合いが秋らしい「ケイトウ」です。
品種改良により、ニュアンスカラーのケイトウも増えていて、他の花とも合わせやすく、これからの時期サブ花として名脇役に躍り出ます。
気分によって品種や色を変えたり、組み合わせる草花を選ぶのを楽しんだり。
秋一番はケイトウで、部屋でも秋のおしゃれを楽しんでみましょう!
【基本情報】
『ケイトウ』
分類: ヒユ科ケイトウ属
学名: Celosia argentea
和名: 鶏頭(ケイトウ)、鶏冠花(ケイサンカ)、韓藍(カラアイ)
別名: セロシア
英名: Cockscomb
原産地:アジア、アフリカの熱帯地方
日本の主な生産地:愛知県
花色:赤、ピンク、オレンジ、黄色、グリーン、ブラウン、ニュアンスカラー
〇花名の由来
日本には奈良時代に中国を経由して伝わり、「韓藍(からあい)」という名前で万葉集にも詠まれています。1200年以上も前から親しまれている花なんですね。
漢字では「鶏頭」と書き、字のごとくニワトリのトサカに似た赤い花をつけることが名前の由来となっているようです。
英語での名前は「雄鶏のトサカ」という意味を持つ「Cockscomb」。
トサカに見えるのは、どこの国でも同じなんですね。
〇花言葉
「おしゃれ」「気取り」「風変わり」「色あせぬ恋」
華やかで、人目を引く形の花や、赤いトサカをつけた白い羽毛のニワトリが自分をアピールするようにおしゃれに見えるところから付けられた意味のようです。
「色あせぬ恋」という花言葉は、ケイトウが鮮やかな色をいつまでも保ち続けていることと、ドライフラワーにしても色が落ちないところからきていると言われています。
【ケイトウの花の構造】
茎の先端の花穂(トサカ)がとても目立ちますが、どのようなしくみになっているのでしょうか。
実は、この部分は花ではありません。
茎が扁平になって帯状に発達したもので、色づいている部分は花弁ではなく茎が変形した花序(かじょ)にあたり、その付け根付近に花が咲きます。
花はどこにあるのかというと…。
トサカの付け根付近の花のような?つぶつぶ。
それにしても、このようなユニークな形になった理由は何だったのでしょう。人間にとって理解不能な造形も植物にとっては必然のことだと思うと面白いですね。
【切花の種類】
ケイトウは、大きく分けて4つの種類があります。
「クルメケイトウ」
(写真左)
トサカ状の花が折り重なって球状になる種類です。漢字では久留米鶏頭と書き、九州の久留米地方に由来すると言われています。
表面は柔らかい毛がびっしり生えていてフェルト生地のように見えます。
切り花としてもっとも使われている種類です。ポップな色合いが多かったですが、ここ数年は、シックな色も増え、大人っぽいブーケやアレンジメントにも合わせやすい、秋の代表花になりました。
「トサカケイトウ」
(写真中央)
鶏頭の名の通りニワトリのトサカのような形の、ケイトウらしい種類。一枚の花序が扇形に広がっています。
よく出回るセッカケイトウやボンベイケイトウはこの仲間です。
こちらも、ブラウンやアンティークピンクなど微妙なニュアンスの色が美しい品種が次々と出ています。おしゃれ感を出すには一押しです。
「ノゲイトウ」
(写真右1)
ろうそくの火のような先の尖った形の花が特徴で「セロシア」という名前で売られていることが多いです。ワレモコウやフジバカマなど他の和花とも相性がよいし、シャンペトル(田園風スタイル)にも似合います。1輪挿しに飾っても風情があります。
「ウモウケイトウ」
羽毛状のふさふさした円錐状の花をつけます。赤、ピンク、オレンジ、黄など明るい色のものが多いです。
ボリュームを出したい時にもおすすめです。
【ケイトウの特徴とお手入れ方法】
ケイトウは比較的もちのよい花で、季節的にも真夏より少し涼しくなってくる時期なので扱いやすいですが、何点か気を付けることがあります。
・花より先に葉っぱが弱ってきます。垂れ下がっていたり、見ばえの悪い葉は早めに取り除きましょう。
・茎が腐りやすいので、花瓶の水は少なめ(浅水)にして、風通しよく飾りましょう。
・長く飾ったりドライにして置いておくとタネがパラパラ落ちることがありますが、それは花の部分からこぼれたもの。花瓶の下にクロスを敷いて、すぐ掃除できるようにするのも一つの案です。
・花房の部分に水分が付着するとカビやすいので、気をつけましょう。
【ケイトウの楽しみ方】
(使用花材:ケイトウ3種、アナベル、グミノハ、アイシーブルー、ヒョウタン)
1,秋の草花と合わせたシャンペトルスタイル
(写真左)
やや個性強めの形のケイトウに惹かれたら、他の花より穂物や枝物との組み合わせがおすすめです。その中にひっそり顔を出すような感じでけてみましょう。今回は、シルバー系の葉物と穂物が入手できましたので、シックな色合いに仕上がりました。
2,ケイトウだけのモダンスタイル
(写真右)
旬のケイトウは、花屋さんでも比較的お手頃な値段で購入できたりします。数種類のケイトウだけを用意して、グルーピングしたまま花瓶に生けてみましょう。色がカラフルでも、ひとつのかたまりで組み合わせるとその品種がより引き立ち楽しめます。
3、ケイトウのごちそうスタイル
(写真左)
深めのボールや器に水を張り、ケイトウやアジサイを料理の盛り付けのようにアレンジしてみます。それぞれの花材を、器から花の頭が出る高さに長さを切りそろえ、アジサイ→ケイトウ→グミノハの順に挿していきましょう。
おいしそうな卓上アレンジのできあがりです。
4,小物使いで遊び心あるスタイルに
(写真右、中央)
一輪差しには、小物をプラスしてみましょう。この時期、装飾用のヒョウタンを見かけます。フォルムだけでもユニークですが、ケイトウと会話しているかのように、並べたり転がしたりと遊んでみてください。ほっこりとした雰囲気作りにいかがでしょう。
5,簡単に束ねてスワッグに!
ドライフラワーにチャレンジしてみませんか
・2、3日花瓶で楽しんだら、状態が新鮮なうちに逆さまにしてぶら下げてよく乾燥させると、ドライフラワーとしても楽しめます。
・よく乾燥させないとカビてしまうので、風通しのいいところにぶら下げておきましょう。
・1~2週間以上乾かしてください。
日頃あまり注目されにくいケイトウですが、様々な種類や用途がある魅力的な花ですね。秋の草花やダリア、菊ともよく合います。季節の移ろいを、まずはケイトウで着飾りお楽しみください。