朝晩に秋の気配が深まる今日この頃。風が涼やかになってくると、金木犀の甘い香りが漂いはじめ、「ああ、もうこんな時期なんだ」と毎年気づく方も多いのではないでしょうか。
切花の世界では、豪華絢爛☆1本でも圧倒的な存在感を放つ秋の花「ダリア」が最盛期を迎えます。
育種技術の進歩によって豊富な品種を通年楽しめるようにもなったダリア。バラやチューリップと並んで最も花色の多い植物の地位に君臨しています。
けれども、もともとは秋の花。気温が下がる秋頃から日持ちも良くこっくりと色がのり、花市場でもたくさんの品種で賑わいを見せます。花色や咲き方の種類などが豊富で、ダリアと一言で言っても語り尽くせない程の魅力があるのです。
今回は、お花屋さんでもよくみかける品種を例にとり、「ダリア」の魅力にせまってみましょう。
【基本情報】
『ダリア』
分類: キク科テンジクボタン属
学名: Dahlia pinnata
和名: 天竺牡丹
英名: Dahlia
原産地:メキシコ、グアテマラ
日本の主な生産地:秋田県、長野県
花色:花色はとにかく豊富で青を除くほぼすべての色があるともいわれています。
(写真左:コーラルオレンジ)
〇花名の由来
古くからメキシコで栽培されていた歴史があり、国花でもあります。 18世紀にダリアの原種がメキシコからスペインに送られ、スウェーデンの植物学者アンドレアス・ダール(Anders Dahl)氏の名前に由来しているようです。
日本には江戸時代末期、オランダ人によってもたらされ、まるで牡丹のような花姿であることから和名では天竺牡丹(テンジクボタン)と呼ばれています。天竺はインドであり、初期にはインドからきた花であると思われていたそうです。
〇花言葉
華麗、気品、優雅、移り気、裏切り、
~エピソード~
フランスの軍人・政治家ナポレオンの后ジョゼフィーヌ(1763年~1814年)はダリアがとても好きで、珍しい品種を宮廷の庭に咲かせるのが自慢でした。
しかし、彼女は誰にもダリアを与えようとはせず、美しいダリアを独占していました。
ある日、どうしてもダリアが欲しかった侍女が愛人の貴族に頼んでダリアを盗み、自分の庭で見事な花を咲かせてしまいました。
それを知ったジョゼフィーヌはダリアへの興味を失ってしまったそうです。
移り気、裏切り、はこのエピソードからなのでしょう。
【品種と咲き方】
花色はもちろん、花びらの形は短いものから長くうねっているものまでbバラエティ豊か!一説によるとなんと園芸用品種も含め約3万種類以上もあるともいわれています。
大きさは、ピンポン玉くらいの小輪から、人の顔と変わらないくらい巨大輪のものなど、同じダリアとは思えないほど印象も大きく変わります。
その中でも切花で比較的手に入りやすく代表的な咲き方(花型)をご紹介しましょう。
・デコラ咲 八重咲で、いかにもダリア!と思わせる咲き方です。舟形の花弁が幾重にも重なった咲き方を指します。(写真左:ミッチャン)
フォーマルデコラ咲き、インフォーマルデコラ咲に分かれ、後者は、花弁がねじれているものです。(写真左から2番目:黒蝶)
・ボール咲(ポンポン咲)花全体が球状になっているものを指します。花の大きさが5センチ以上をボール咲きと呼び、5センチ以下のものをポンポン咲きと言います。(写真中央:エマ)
・スイレン咲 名前の通り、満開時のスイレンを思わせるように花弁が幅広く、丸みを帯びて咲く咲き方です。(写真右から2番目:ヴァニラ)
・カクタス咲 花弁が細く、花縁が曲がって筒状になる咲き方です。(写真右:熱唱)
・シングル咲、アネモネ咲 一重咲きの花型で、一見ダリアのイメージよりはヒマワリやマムに似ています。
とあるダリアの生産地にて・・・
ビニールハウスで温度管理され、繊細な花びらを傷つけないように、工夫がなされています。
ダリアは、つぼみで摘むと、きれいに咲くことができないため、花が開いた状態で産地から出荷されます。より長く楽しむには、7~8分咲きの花を選ぶとよいでしょう。
*左の写真は希少品種の「カフェオレ」
【ダリアの特徴とお手入れ方法】
日持ちがやや短いため、お手入れすることで、少しでも長持ちさせることができます。
・下葉を取り除く
茎に葉がついている場合は、枝分かれしている根元から切り落とし、花に水が行くようします。
・生ける前に切り戻しをする。
ダリアは茎が空洞になっているため、より水分を必要とします。生ける前に、水切りをして水揚げをしましょう。茎はなるべく斜めに切り断面積を増やします。
(*水切りとは…ボールなどに水を貯めその中で茎をきること。水圧によって水上がりがよくなります。)
・それでも元気がない場合は、湯上げをおすすめします。☆Kumpuホームページ→MAGAZINE→「お花を長く楽しむための基本の水揚げ法」を参考にしてみてください。
・花瓶の水は浅水で大丈夫
花瓶の大きさにもよりますが、水量は5cm前後~花器の中くらい程度にして、茎が水に触れる部分を少なくしましょう。
・霧吹きで水分補給
お肌と同様、空気が乾燥していると、花びらは水分を失い、ハリのない状態になります。花の裏側から霧吹きで水分補給をしてあげるのもおすすめです。
・傷んだ花びらはカットする
蕾から一番最初に開く花びら(外側)から萎れてきます。そうした時は花びらを抜かずにハサミで傷んだ部分をカットします。コツは花びらのつけ根を残すことです。手で引き抜くと、花が散ってしまうこともあるので気を付けましょう。
・できるだけ毎日水替えをする
どのお花にも共通していえることですね。
水替えのタイミングで、花の鮮度保持剤や塩素系漂白剤(1~2滴)を入れることで、より日持ちしやすくなります。
【ダリアの飾り方のコツ】
ダリアやヒマワリを生けるとき、花が正面ばかりむいてしまい、なんだかしっくりこない…と思ったことはありませんか?ちょっとしたコツで、解決できます!
〇花の向きや角度を変えてさまざまな顔を
花の特徴として、真っ直ぐな茎に対して、横向きに花が付いています。そのため、花顔だけみて生けると正面ばかり向いて、なんだか動きのない直立したアレンジに。あえて、顔の向きを揃えず、横や斜め、後ろ向きがあってもよいので自然な雰囲気にいけて奥行き感をだしてみましょう。
ダリアだけでも十分に美しいアレンジにできます。花の間に、小花やグリーンを少しだけ見せてブーケ風に。1輪ずつの繊細な色彩を際立たせています。(写真上段左)
自然に生えてるかのように、高低差をつけてダリアたちを躍らせてみるのも良いですね。(写真上段中央)
〇器は口の狭いもの
飾る花瓶次第で和風にも洋風にもアレンジできます。
数本だけいける場合は、口が狭く、重心が下にある花瓶がおすすめです。 筒状の器では、コロコロと動いて茎が定まらないダリアも、簡単に、生けたい向きに固定できます。(写真下段左)
〇季節の草花と合わせてナチュラルな装いに
その季節の枝ものや実物を、ダリアの口元に低くあしらいます。花留めにもなり、キッチンブーケ風にアレンジが可能です。(写真下段右から2番目)
季節の草花は、ダリアをナチュラルにする引き立て役に。秋のバラ、ケイトウ、コスモスなどを合わせてみませんか? ダリアも、野原で摘んだやさしい表情を見せてくれます。赤いナナカマドの実が秋の深まりを感じさせます。(写真下)
そろそろ、お花にとっても過ごしやすい季節。ダリアの魅力を探しに出かけませんんか。
◆飾り方で使用したダリアたち
<写真上段> かまくら(白)、純愛(薄いピンク)、みっちゃん(フューシャピンク)、朝日てまり(赤)、黒蝶(ボルドー)、ハミルトンジュニア(オレンジ)、ヴァニラ(白地に赤縞)
<写真下段>コーラルオレンジ(サンゴ)、エマ(赤)、幸せの花嫁(ピンク)、朝日てまり(赤)