日本の暦では「啓蟄」。暖かな気候になりにつれ冬眠していた虫たちが穴から出てくるころ。
外の景色も柔らかな色合いになってきました。花壇も彩りを増し、その定番の花といえパンジー。似た花にビオラがありますが、一般的には花の大きさが5センチメートル以上のものをパンジー、それ以下のものをビオラと呼んで区別しているようです。
花壇などでよく見かけるものは茎が短く横に広がるようなイメージですが、10年ほど前より茎の長いパンジーが出始め、切り花としても人気になっています。
そこで、今月ご紹介するお花は、切花の「パンジー」です。春のブーケには欠かせないアイテムとなっています。
花びらのフリルが可憐なパンジーは繊細な印象がありますが、実はとても生命力が強いお花。
大抵は花が萎れるとそこで終わってしまいますが、パンジーは萎れたお花(1番花)を手で優しく摘んであげることで次の花(2番花)の蕾が上がってきて、一回り小さめの花が咲いてくれます。お手入れをすることで、数週間程楽しむことができるお花なのです☆
【基本情報】
『パンジー』
分類:スミレ科・スミレ属
学名:Viola
和名:三色菫
英名:Pansy
原産地:ヨーロッパ
日本の主な生産地:群馬県
日本には江戸時代末期にオランダから渡来し、花形が人の顔に似ていることから人面草(じんめんそう)、蝶が舞う姿にも似ていることから遊蝶花(ゆうちょうか)と呼ばれていたそうです。
花色:紫、青、赤、ピンク、白、黄色、オレンジ、など
●花名の由来
パンジーの語源はフランス語の「パンセ(思想)」から。
そういえば、うつむいてなにか考えている人の顔のように見えますね。
●花言葉:「もの思い」「思い出」
花言葉も、まるでもの思いにふけるような花姿からついたものと思われます。
【お手入れ方法】
・水揚げは水切りにします。(水を張った容器の中で茎を切る)。
・茎が柔らかいのであまり強く握らず、花のすぐ下の茎は細いので、当たって折れない様に気をつけましょう。
・花瓶の水は適量(半分位)に。
・咲いていた花が少し傷み始めたら、花の付いている茎の根元から切って取り除くことで、次の蕾が咲きやすくなります。
【楽しみ方】
*1本の茎から枝分かれしていくつか花やつぼみがついているものが多く、茎の伸び方もそれぞれ個性的で表情があるので、あまり深く考えずに花瓶にポンと生けるだけでこなれた演出ができます。
*可愛らしい花姿のパンジーだけの花束もおすすめです。
*茎がやや柔らかいので、他の花と束ねるときなどは折れないように注意しましょう。
*グリーンや他の花をクッションにして使うと良いかもしれません。
*折れてしまったお花は、水中花にして楽しむことができます。
また、そのまま新聞紙などに花を裏面にして置いておくと、一日で押し花のようになります。
華奢なように見えて2番花まで楽しめる、切花としても日持ちのよい花です。
春のお花屋さんで見かけたら、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。
春の風物詩として親しまれている「桃の節句」から始まる3月。桃の花や実を飾る風習が生まれた由来は平安時代ころ。
桃の花が神聖なものとして崇められ、女性の美しさや健康の象徴となり、女の子の健やかな成長を願う意味が込められています。
このように、季節の移ろいのなかで、折々の花木(かぼく)を愛でる文化が私たちには自然と身に付いています。
「花木の文化は日本の心」といっても過言ではありません。
花木とは…見て楽しむことのできる美しい花を咲かせる樹木のことを指します。花が綺麗で庭や公園、お寺や神社などに植栽されている樹木のことを想像してもいいですね。
今回は、いつもとは異なった視点で、春を告げる代表的な花木の花をご紹介しましょう。
これから梅、桃、桜、ハナミズキとバトンを渡していく花たちの共演を観賞できる素敵な季節の始まりです☆
【花木の特徴】
植物には木と草、木本(もくほん)と草本(そうほん)があります。
木本は、堅い幹の形成層を作りながら年ごとに太くなっていく植物。
草本は、茎は一定以上太くならず、1年もしくは多年草でも寿命が数年ほどの植物。植え替え可能なので、咲く時期を調整することができます。私たちが、普段花を生けたりする「生花」や「草花」にあたります。
花木の魅力とは…
土に根を張り、基本的に同じ時期に自然に花を咲かせて、時の移ろいを知らせてくれます。樹全体が花でおおわれ、周りの風景とともに全体で大きくとらえて観賞できること、記憶に残る香りが多く、その香りからも季節を感じられるものが多いことです。
【春を告げる花木】
バラ科:ウメ、モモ、サクラ、ボケ、ヤマブキ
モクセイ科:レンギョウ、オウバイ
マメ科:ギンヨウアカシア(ミモザ)
ロウバイ科:ロウバイ
ジンチョウゲ科:ジンチョウゲ
モクレン科:コブシ、モクレン
ミズキ科:ハナミズキ、ハンカチの木
❀バラ科サクラ属の花木は白・桃色・赤の5弁の花を咲かせます。八重咲もありますが、原形は5弁であることが共通しています。
葉が出るより先に花が咲くため、木が花で覆われるのが特徴です。これらの花木が春を告げる象徴である理由が納得できますね。
❀早春には黄色い花が多いと思いませんか?
ロウバイ、マンサク、サンシュ、ミモザなど・・・理由は定かではありませんが、春先にいち早く活動し、花粉を媒介する虫たちにアピールしやすくするためだと考えられているようです。
季節の移ろいのなかで、折々の花木を愛でる日本ならではの文化。
現代では、切花でも楽しめるように進化してきました。
1種だけを生けてその枝ぶりや香りを楽しんだり、季節の草花と組み合わせて飾ったり、お好みのスタイルで花木を身近に楽しんでみませんか。
もうすぐ3月。
梅の蕾がほころび始め、桜へと移行していく季節、ヨーロッパでは「Mimosa(ミモザ)」が春を告げる花として大変人気があります。
最近では、日本でも2月の後半から3月にかけて、切花のミモザを使ったリースなどのワークショップも流行り、定着してきてるようです。
明るい黄色の羽毛のような花と春のまだ柔らかいお陽さまを浴びて、ふわふわと風に揺れる姿はとても可愛らしく、見ている人に幸福感を与えてくれますよね。そんなミモザをご紹介します。
【基本情報】
『ミモザ(アカシア)』
分類: マメ科・アカシア属
学名: Acacia dealbata
和名: 銀葉アカシア
英名: Mimoza、Mimosa, Silver wattle
原産地: オーストラリア
花色:イエロー、オレンジ
●花名の由来
ミモザは本来オジギソウ属(Mimosa)を指す名前ですが、フサアカシア(アカシア属)の葉がオジギソウの葉に似ていることから、誤ってフサアカシアを「ミモザ」と呼ぶようになったといいます。
日本では黄色の花を咲かせるアカシアの仲間を総称してミモザと呼ぶことが一般的です(一部、白花もあり)。アカシアは世界で約1000種以上あり、約700種がオーストラリア原産。現地では「ワトル」と呼ばれ、国花にもなっています。
●花言葉:「感謝」「思いやり」「感受性」「友情」「秘密の愛」「堅実」など色々とありますが、とても温かな言葉が多く、相手を思いやるようなものばかり。香りも良く花言葉も素敵なミモザは贈り物にも喜ばれそうですね。
【お手入れ方法】
・ミモザの水揚げは茎を普通に切るのではなく縦に割れ目を入れたり、ハンマーなどで切り口を軽く叩く方法が適しています。
・蕾が咲かないのは栄養分(糖分)が足りないからです。切り花用の延命剤には糖分も入っていますので、ミモザを飾るときには水に混ぜて使ってみてください。
・切り花は乾燥にとても弱いので、エアコンの風などが直接当たらないように注意してください。霧吹きなどをかけて湿度を保つことをおすすめします。
黄色いかわいらしい花が女性に人気のミモザは、早春には切り花として店頭に並び、ドライフラワーにして、スワッグやリースなどの素材にも使われています。
パウダリーでふんわりと甘い上品な香りは、ヨーロッパでは香水やルームフレグランスとしても利用されているそうです。
【豆知識…海外では?】
●フランスでミモザは太陽をイメージさせ、春を告げる「冬の太陽」と呼ばれています。
南フランスでは、古くから毎年2月に「ミモザ祭り」が開催され、フラワーパレードやワークショップなどミモザの花を満喫できる人気のイベントのようです。
●イタリアでは3月8日を「ミモザの日」と呼んでいます。男性は愛する妻や彼女、母親にミモザの花を贈り、日頃の感謝や愛する気持ちを伝える習慣があります。
●アメリカでは5月に「National Mimosa Day」という、ミモザカクテルにまつわるイベントが開催されているようです。
立春が過ぎ、暦の上では春のはじまり。花市場やお花屋さんでは、一足早く春爛漫な雰囲気が漂っています☆
その中でも主役に君臨するのがふわふわ春らしいお花のラナンキュラスです。その魅力を前回に引き続きお話していきましょう。
ラナンキュラスは約500種類以上の品種があり、年々品種改良が進み、珍しい品種が次々登場しています。ラックスシリーズやモロッコシリーズなど、人気品種がシリーズ化した品種群があることも特徴の一つです。
「これもラナンキュラス?」という見た目のものもあり、まさに進化中のお花ともいえるでしょう。
今回はその種類の中から人気の高い品種(品種シリーズ)をご紹介します。
これから3月頃までが最盛期!一年の中で旬は短く、限られた期間です。
花を通して季節を感じ、一周回って同じ季節にまた思い出す。お花は季節の案内人かもしれませんね。
バリエーション豊かなラナンキュラス☆自分好みの記憶に残るような種類を見つけてみませんか。
a:スタンダード…花びらがたっぷり重なり、ふんわりロマンチックな雰囲気。花色も大きさも豊富で、「ラナンキュラス」といえば、この花姿を想像する方が多いのではないでしょうか。
b:アニマルシリーズ…個性的でキュートな花姿の品種には動物の名前のものがあります。写真は「アニマルライオン」。ライオンのたてがみを彷彿させるようなグリーンの花びらのフォルムがかっこいい品種。その他に、「ゼブラ」「ターキー」などがあります。
花びらを触ると花というより、葉のような質感のグリーン系の品種が多いのも魅力的ですね。
C:ポンポンシリーズ…フリルのような花びらが重なり、丸みのある可愛らしい花姿。単色もありますが、グリーンとピンク、グリーンと白などの複色で咲く品種が人気です。珍しいお花が好きな方にもおすすめです。
d:シャルロット…アネモネ咲の品種で、薄く重なった花びらの縁がひらひらと波打ち美しく、一輪でも存在感は抜群。「変わり咲のラナンキュラスの女王」と呼ばれるほど。さまざまなシーンに活躍する逸品です。
e:フェスティバルシリーズ…八重咲の白系品種が多く、開花すると花の中心が緑色に変化します。また、花が開くのは日の当たる日中のみで、暗くなると花が閉じるのも大きな特徴です。昼と夜の雰囲気の違いを楽しめるのもよいですね。
f:モロッコシリーズ…黒くて大きな雌しべが目立ち、花びらは縮れているものや、かなり多弁のものなどエキゾチックな花姿。シックでアンティークな花色が多く、ミステリアスな雰囲気を持つモロッコシリーズは数多くのファンがいます。
g:ラックスシリーズ…花びらにワックスをかけたような艶があり、光が当たるとことでキラキラ輝きます☆ニュアンスカラーが多く、やわらかい雰囲気作りにも最適。スプレー咲きなので、1本の花から切り分けて楽しめ、徐々に蕾も咲いてくれるので、長く楽しめる品種です。
h:希少品種…例えば「ラネモヌ」。名前から想像できるように、ラナンキュラスとアネモネの掛け合わせ。ヒマワリにも似ていてなんとも魅力的。品種改良が目覚ましいので、レアな品種に出会えるとなんだかラッキーな気持ちになりますね☆
【飾り方のバリエーション】
(写真上段左より)
・一輪を愛でる。香水瓶など、お気に入りの雑貨を器に見立てインテリアの一部に。
・一種類とグリーンでシンプルに。
ラックスシリーズはスプレー咲なので数本でもボリュームがでるのでおすすめです。
・季節の草花とブーケ風にアレンジ。(kumpu定期便のお花です)
・同系色でまとめる。個性的な変り咲の品種でも他の花と馴染みます。
(写真上段左より)
・旬な枝物と合わせる。これからが旬なミモザとの相性も抜群です。
・広い空間には巨大輪のラナンキュラスもおすすめ。ラグジュアリーな空間に華をそえます。
・お店のディスプレーにも☆春爛漫な雰囲気が広がることでしょう。
春の花の中でもひときわ華やかさが際立つ花といえばラナンキュラス。このお花も球根植物になります。引き続き球根花特集vol.3でご紹介していきましょう。
薄紙のように繊細な花びらが幾重にも重なり、光と温度に反応して開く花姿がとても魅力的。一輪だけでも十分な存在感があります。種類にもよりますが、この花びら、100枚から200枚以上重なり合っているものもあるそうです。
寒さが一段と増すこの時期、一足早い春を感じさせてくれる切り花として、テーブルフラワーやブライダルブーケの主役となって活躍するお花。花屋さんでも比較的お手頃な価格で購入できますので、色々な種類を楽しんでみるのもいいですね。
【基本情報】
『ラナンキュラス』
分類: キンポウゲ科・キンポウゲ属
学名: Ranunculus asiaticus
和名: 花金鳳花(はなきんぽうげ)
英名: Ranunculus
原産地: 西アジア、ヨーロッパ東南部、地中海沿岸
日本の主な生産地:長野県、福岡県、香川県
近年は「日本産のプレミアムな切り花」として、北米や東南アジア等にも輸出されています。特に大輪のラナンキュラスは海外でもとても人気があり、高級ホテルやカジノなどの装飾に使われることが多く、海外では1輪数千円で取引されることもあるそうです。
花色:赤、ピンク、白、黄色、オレンジ、紫など
●花名の由来
学名の「Ranunculus(ラナンキュラス)」は、ラテン語の「rana (カエル)」 を語源としています。この属の多くが、カエルのたくさんいるような湿地を好んで育つことや、葉っぱの形がカエルの足に似ていることが名前の由来のようです。
余談ですが、他のキンポウゲ属のメジャーなお花をあげてみると、アネモネ、クリスマスローズ、クレマチス、デルフィニューム、ニゲラなど。確かに葉っぱの形が似てますね。
●花言葉:「とても魅力的」「晴れやかな魅力」「光輝を放つ」
シルクのような心地よい肌触りと鮮やかな色彩であることが、これらの花言葉の由来です。また、ギリシャ神話に出てくる「ラナンキュラス」という青年の悲恋の話にも通じます。親友のために自らの恋を諦め、悲運の生涯を閉じた傍らに咲いていたのがラナンキュラスの花なのでした。
【お手入れ方法】
・余分な葉は、手で優しくちぎり取ります。
・茎の切口は、真っ直ぐに切ります。茎が細く空洞になっているので、手早くスパッ!と切るのがポイントです。
・花瓶の水の量は、浅水(3~5cm)に保ち、こまめに水替えをしましょう。
・元気がないように見えたら、水不足かもしれません。生ける前に湯揚げという方法の水揚げをおすすめします。
(湯揚げの方法は、お花の話「お花を長く楽しむための基本の水揚げ方法」をご覧ください。)
・寒さに強く、暑さに弱いお花なので、なるべく涼しい場所に飾りお楽しみください。
【楽しみ方】
開花状況に合わせて切り戻しをしましょう。茎に対して花の重みが大きいお花なので、開花が進むにつれ重さが増し、茎が折れてしまうことも。最初は長く飾って、徐々に切って短くして、小さな花瓶に活け替えていくのがおすすめです。
a:同系色のラナンキュラスたちをメインに季節の草花と合わせて。
b : 小春日和のような暖かな色味の花たちを、花器「ディアボロ」に集めてみました。
c:春の花アネモネをポイントにグリーンを添えてテーブルフラワーに。
d:ブライダルブーケとしてもとても人気です。シックなカラーは大人の雰囲気つくりにぴったり。
e:花がたわわにさいてきたら、おもいきって茎を短く切り、一輪挿しにいけてみましょう。
f:数本の春の花と会話しているようにいけると楽しいですね。
d:一輪でもとても華やかさがある品種「シャルロット」は、装飾にもよく使われます。
次回は、これもラナンキュラスなの?と思うような楽しいラナンキュラスの品種をご紹介する予定です。
球根花シリーズ、続いては「ヒヤシンス」です。
幼い頃学校で水耕栽培の勉強として育てた思い出がある方もいらっしゃるのでは。
水栽培が容易で、すらりと伸びた白い根や、透明な容器とマッチした全体の美しさはヒアシンスならではのものです。オトナになって、改めてその魅力を知り、インテリアの一部として飾れる人気なお花になりつつあります。
そして甘く爽やな香りも魅力のひとつ。お部屋にお花の香りがほんのりとするだけで和みますよね。ヒヤシンスは、小さな花一つ一つにしっかりと芳香があるので、取れてしまった花も拾って飾っておくと、また香りを楽しめます。
いい香りはいい気を運んできてくれるので、人が集まるリビングや玄関やトイレなどに飾ってみてはいかがでしょう☆
【基本情報】
『ヒヤシンス』
分類: キジカクシ科・ヒヤシンス属
学名: Hyacinthus orientalis
和名: 夜香蘭、風信子、飛信子
英名: Hyacinth
原産地: 地中海東部沿岸(ギリシャ、シリア、トルコなど)
日本の主な生産地:新潟県(切花)、愛知県(鉢物)
花色:白、ピンク、赤、青、紫、黄
●花名の由来
属名の学名「Hyacinthus(ヒヤシンサス)」は、ギリシア神話の美少年ヒュアキントス(Hyakinthos)の名前に由来します。
●花言葉
全般:スポーツ・ゲーム、悲しみを超えた愛紫:悲しみ
青:変わらぬ愛
白:控えめな愛らしさ
ピンク:淑やかな可愛らしさ
赤:嫉妬
黄色:あなたとなら幸せ
♠花名や花言葉にまつわるギリシア神話を紐解いてみましょう。
美少年ヒュアキントスは、太陽神アポロンと西風の神ゼピュロスに愛されていました。ヒュアキントスは移り気な西風の神ゼピュロスよりも太陽神アポロンに心ひかれていました。
ある日、ヒュアキントスとアポロンが円盤投げをしていると、その親しげな様子を見たゼピュロスが嫉妬して意地悪な風を起こします。すると円盤の軌道が変わり、ヒュアキントスの額に円盤があたってしまいます。そして大量の血を流して死んでしまったヒュアキントスのその血から紫のヒヤシンスの花が咲いたといわれます。
太陽神アポロンがこの花を見て「アイ、アイ(悲し、悲し)」と嘆いたことから、ヒヤシンスは悲しみのシンボルといわれるようになりました。
※ 血がこぼれて花になったという言い伝えには、他にアネモネの美少年アドニス(ギリシア神話)の伝説があります。
ギリシア神話は悲劇が多いですが、花はいつも心を救ってくれる存在になっているような気がしてなりません。
【お手入れ方法】
<切り花の場合>
・ヒヤシンスは球根から何枚もの葉が重なり合って生えています。いきなり茎をたくさん切ると、葉っぱが全部取れてしまいます。最初は茎を数ミリカットして生けて、葉っぱ付きのヒヤシンスを楽しみましょう。白い部分を切らないほうが日持ちもよくなります。
・花瓶の水は、チューリップ同様に浅めにします。
・茎の切り口はぬるっとしているのと、切り口付近に泥がついていることがあるので、水が汚れやすいです。生ける前に、水洗いをして、こまめに水替えをしましょう。
<球根付きの水栽培の場合>
・花瓶の水は、根が浸かる位の量で構いません。
球根まで浸かってしまうと、腐りやすくなりますので気を付けましょう。
・暖かい室内で飾ると、ぐ~んと茎が伸びて開花し、花の重みで垂れてしまう場合があります。その時は球根から切って、低めの器に飾り直す方がおすすめです。
☆観察記録
左写真A…鉢物から土を落とした直後の芽出し球根
写真B…仕立ててから約2週間後の成長した様子。ピンクは1球から2本咲きました。
(鉢物から水栽培用にする仕立て方は、インスタグラムでご紹介します)
【楽しみ方】
・ヒヤシンスは水分たっぷりで重量がある花です。そして伸びます!花瓶の丈が低すぎると、花の重みに茎が耐えられず折れてしまうので、花瓶選びもポイントのひとつです。
少しずつ茎を切り戻して、長さを調整していくと長く楽しむことができます。
①花が全部開いてきたら、短くして花瓶のフチに花を支えてもらう要領で生けると、柔らかい茎が折れるのを防ぐことができます。
その他に、季節の草花と一緒に生けることで、支え合い折れにくくなります。
②こぼれ落ちた花たちは、こうしてお皿に飾り香りを楽しむのもいいですね。
③芽出し球根の中でもメジャーな「ムスカリ」。パープルのやさしい色合いは、ヒヤシンスとも相性がよいので、ストンとした器に入れるだけで春のオブジェに仕上がります。
④土栽培のままお部屋に取り込むこともできます。ちょっとおしゃれなグラスに植え替えたり、鉢の回りをモスなどで加工するだけで、インテリアの一部として素敵に飾ることができますよ。
⑤鉢カバーを土っぽい自然な素材に植え替えると、お部屋の中でも小さなガーデニングコーナーに様変わり。
水栽培、土栽培、生花と、いろいろな形で飾ることができるヒヤシンス。
今年はぜひ手に取り、好きなスタイルで楽しんでみてはいかがでしょう。
年が明け、暦の上では大寒に入りました。春がひときわ待ち遠しく感じられますね。今年も季節と共に花を愛でるお話をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
昨年のMagazineでは「花」そのものにフォーカスし、その魅力を知っていただけるよう、月前半の回では旬の切り花一種を紹介してまいりました。今年は、もっともっと切り花を知っていただくために、コンスタントにその月の旬なお花たちの話をしてくいく予定です。
お花と向き合い”ありのままの姿”を知ることが、花とのつきあい=花のある暮らしに繋がることを願って☆
早速ですが、今月は球根花シリーズです。球根植物とは、茎や根の一部が変化した部分に栄養を蓄えて、毎年同じ季節に繰り返し花を咲かせる多年草のこと。
1月は一段と寒さが厳しくなる時期ですが、花屋さんの店頭では春を感じるお花が彩り始めています。その多くは球根花でもあるのです。
春に咲くガーデニングの花たちが、切り花の世界では一足早く冬から春先にかけてが見頃になります。近年では、球根がついた状態で購入できる花もあり、そのまま飾るスタイルも人気のようです。花をナチュラルに楽しむ…あたたかな春がそっとやってくるかもしれませんね。
トップバッターは世界中で親しまれている花「チューリップ」です。
【基本情報】
『チューリップ』
分類: ユリ科・チューリップ属
学名: Tulipa gesneriana
和名: 鬱金香
英名: tulip
原産地: トルコ
日本の主な生産地: 富山県・新潟県
花色:花色はとにかく豊富で青を除くほぼすべての色があるともいわれています。
●花名の由来
語源は、原産地のトルコ語でターバンを意味する「Tulipan(チュルバン)」からきています。花弁が重なり合うように咲く姿が ターバンに似ていますよね。
●花言葉:「思いやり」「名声」「愛の告白」
チューリップの花言葉の由来には、あるオランダの物語があります。
三人の騎士が美しい娘に求愛し、彼らはそれぞれ自分を選べば王冠(名声)、剣(強さ)、財産(資産)を彼女に与えようと言いました。一人を選べば残りの二人を不幸にしてしまうと思った娘は、女神フローラに頼みチューリップに姿を変えました。三人の騎士はそのチューリップを大切に育てたということです。
この物語から、チューリップの花は王冠を、葉は剣を、そして球根は黄金(財産)を表しているといわれています。
スッと伸びた愛らしい姿や花言葉からも、この時期、特別なシーンの贈り物にもおすすめですね。
【お手入れ方法】
チューリップは、なにかの生き物のように、伸びたり動いたり花びらが開閉したりと変化します。葉は肉厚で水分を多く含み蒸発しやすく、吸水力が強いお花であることを念頭にお手入れしましょう。
・水に浸かる余分な葉は、取り除きましょう。(写真右)
・茎を切るときは、切口を斜めに切ります。
・花瓶の水の量は、浅水(3~5cm)にし多くても半分程度にしましょう。茎が水に浸かりすぎると痛む原因にもなります。こまめに水替えをしましょう。
・光と温度に敏感に反応する性質があるので、太陽の当たる窓際や暖房のきいた部屋に置くと一気に開きます。長く楽しみたい場合は、気温が低めのところをおすすめします。
【楽しみ方】
a:贅沢に束ごとたっぷりと生ける。
表情豊かなチューリップたちを観察してみましょう。
b : 一輪と向き合う。
ラインを生かして、器にそって寝かせていけてみます。
c:数本と春の花をそえて。
スイートピーなど相性がよいお花とリズミカルに挿していきます。
d:器選びで世界観を作る。
器の形、素材などにこだわり、インテリアの一部として飾ってみましょう。
チューリップは生けてからも自由に動いたり伸びたりするので、バランスが崩れてきたら切り戻したり花瓶を変えたりと、少し手直ししながらお楽しみください。
早いもので12月も折り返し、来週は一年の最後を彩るイベント🎄クリスマス🎄ですね。
そろそろ準備は整いましたか?
ちょっとしたアイテムを飾るだけでムード作りはできますが、やはりおすすめは植物の力をいただくこと。そこで、引き続き「ナチュラル・クリスマス」のご提案です。
主役は前回ご紹介したエバーグリーン。リースやスワッグ作りには欠かせませんが、もっと気軽に楽しむことができる、グリーンを器に見立てて花を飾るスタイルです。お花との境目が無いので、より自然の情景に近づきます。
テーブルにポンと置くだけでも、クリスマスムードに☆
何度か紹介しているリーフプレートを使い、お菓子や実物などを盛り付けて一緒に飾ると、テーブルコーディネートに一体感が出て、食卓がワンランクアップします。森の中にいるような澄んだ香りのする針葉樹をあしらうだけで、そこにはクリスマスの世界が広がるでしょう。
長く飾ることができますので、その後はお花を入れ替えて、グリーンの香りに心を落ち着かせながら過ぎゆく2022年を振り返るのもよいですね。
【イメージ】
シンプルな花瓶をエバーグリーンに衣替えします。
用意する器は、円筒のガラス瓶などがおすすめです。できれば、ストンとシンプルなお茶缶のような形が作りやすいです。その上に、エバーグリーンを巻いていく手法です。
【アレンジ例】
器がグリーンなので、飾るお花はどんなものでも似合います。
・お花屋さんで定番のバラやガーベラをピンク系でまとめてみました。(写真左)
・クリスマスの花といえば!このアマリリス。高価ではありますが、華やかな雰囲気作りにとてもおすすめのお花です。グリーンを横広く敷き詰め、装飾用の姫リンゴや松ぼっくり、星形のスターアニスなどの実物を転がせばナチュラルテーブルコーディネートの出来上がりです。(写真中央)
・器に生ける花は、生花以外にドライフラワーやコットンなどの素材も馴染みます。水がいらないので、手間いらず&長い間楽しめますよ。(写真右)
【用意するもの】
●今回使用した花材
ヒムロスギ、ブルーアイス、実付ヒノキ
●資材
リースワイヤー(リボンや麻紐などでも構いません)
輪ゴム、花ハサミ、クラフトハサミなど、両面テープ、筒形の器
とてもシンプルです。
【基本的な作り方】
1.下準備をします。
器に両面テープを4本前後貼ります。(写真①)
グリーンは、器の長さに対して約1.2~3倍の長さに切り分けます。それ以上短いのは、後挿し用として残しておきましょう。
2.両面テープを剝がしながら、グリーンを置いていきます。上向き下向きとランダムに重ねて構いません。片手(ここでは左)でしっかりもっていてください。(写真②③)
3.一周したら、輪ゴムで仮止めをします。(写真④)
4.隙間があいて、中の器が見えるところは、余りのグリーンを輪ゴムにくぐらせ埋めていきます。(写真⑤)
5.ワイヤーで上から下、下から上とクロスしながら巻いていきます。この時の巻く力加減がポイントで、あまり強く巻きすぎるとグリーンが潰れてしまい、逆に緩すぎると落ちてきてしまうので、ふんわり感を大切に程よく巻いていきましょう。(写真⑥⑦)
6.上部と底を見て、固い枝がでている箇所は切ります。(写真⑧)
葉っぱが裾広がりになっていたほうが、自然な風合いで安定感もでます。
7. 整えて出来上がりです。(写真⑨⑩)
☆ベースができたら、動きのあるグリーン(例えばユーカリ)や実物を差し込んで加えたり、スターアニスなどはワイヤリングして留めるか、グルーガンで張り付けて装飾すると、よりスペシャル感がある器ができます。
☆ベースを巻くワイヤーを、麻紐やリボンなどに変更して装飾するのもおすすめです。
8.器の中に水を入れ、花を生けましょう。その時、使用したグリーンも一緒に挿すとより一体感がでます。
●お手入れ方法…乾燥をさけるために、毎日器に霧吹きをかけてあげると、より長持ちします。
3回連続でお届けしたナチュラルクリスマスのご提案、いかがでしたでしょうか。お花のある暮らしを楽しむヒントになれば幸いです。
ぜひ、心地よいグリーンの香りに包まれて幸せなひと時をお過ごしください☆
※冒頭でご紹介したリーフ型のお皿の一部を、kumpuの「お花のための道具」でも販売を始めました。
お花を買って、さあ飾りましょう!となった時、先ず始めにすること。
それは、ハサミや花瓶などの道具の準備ですよね。そして、わくわくしながら花を飾ってみるとなんだかいまいち、
せっかく活けたのにすぐに萎れてしまった・・・なんてことはありませんか?
実は、準備する花道具で花の日持ちや飾り方にも左右されることがあるのです。
そこで今回は、花のある暮らしにの中で、最初にあると便利な道具や花瓶をご紹介いたします。
【花ばさみ】
お花の持ちを良くするコツの一つは、シンプルですがきれいな水をたくさん吸わせてあげることです。
よく花の茎を「スパッと」斜めに切ってください!とお伝えしますが、その理由は、極力、茎の中の導管をつぶさず、
吸水する断面を広くすることによって、水を多く吸える状態にしてあげるためなのです。
花ばさみと普通のはさみの大きな違いは「刃」にあります。日常使用している紙切ばさみやキッチンバサミのように
厚い刃で切ると、茎の中の導管がつぶれて吸い上げが悪くなり、また雑菌が着きやすく水も濁りやすくなってしまいます。
花ばさみは茎にかかる圧を最小限に抑えてスパッと切れるよう、刃が薄く作られているのです。
ぜひその違いを試してみてはいかがでしょうか。
こちらの花ばさみは、プロの花屋さんでも一番ニーズがある老舗のメーカーさんのものです。
普通のハサミと違い刃は薄く作られています。
大きなグリップとくぼみが特徴的で、一番力の強い人差し指を添えると支点が安定して力が加えやすくなり、枝物など
固いものも切りやすくなります。
茎がスパッと切れれば、お花にも優しく、吸水性もぐんっと上がりますので、長く楽しむためのお手入れには欠かせ
ませんね。
※Kumpu DAY&FLOWERSでもご購入可能です⇒お花のための道具へどうぞ
【花瓶】
花をより美しく見せる方法の一つとして、花瓶との相性、コーディネートがあげられます。
ベーシックで使いやすい花瓶を選ぶ時のポイントをお伝えします。
■色:一家に一台とでもいいましょうか、花瓶の色はどんな花とも合う透明か白のシンプルでベーシックなデザイン
のものをおすすめします。
①透明なガラス素材(下画像左)
茎の部分も見えるので花全体を楽しめたり涼しげな印象に仕上がります。またどんな花の色にも馴染むので万能です。
②白の陶器(画像右)やほうろうなどの素材
茎が見えないのでお花がよく映えますし、水が多少にごってきても気になりません。
■形:円筒形などストンしたニュートラルなスタイルがオールラウンドプレイヤーです。
手軽に花を楽しむなら一輪挿しからでも良いでしょう。
慣れてきたら、お気に入りの花瓶を増やしてコーディネートの幅を広げて楽しんでみてはいかがでしょうか。
ここでは、何本かで活けたり花束を飾るのに適した花瓶をご紹介します。
①クリアシリンダー(画像左)[直径10cm×高さ20cm]
円筒の形を生かして、例えばカラーなど縦長で茎のラインが美しいお花をストンと活けたり、花瓶の口が広いことを
利用して、アジサイやシャクヤク等ふんわりと丸みのあるお花を、花瓶の縁に乗せながら溢れるように活けると
ボリューム感が出てバランスがとりやすいです。
②ドロップポット(画像右)[口6cn,直径10cm×高さ20cm]
丸みのあるフォルムは、お花も曲線のラインがあるのもが映えます。
口元が狭いので、長めの花でも一輪差しとして利用することもできます。
白色の陶器なので、お花がなくてもインテリアとして飾っておくこともできますね。
※Kumpu DAY&FLOWERSでもご購入可能です⇒お花のための道具へどうぞ
お花を活ける時、なんとなくそのままの長さで挿したり、逆に切りすぎて花瓶の口元に埋もれてしまったり…となんだかしっくりこない時ってありませんか?
お花を飾るのに正解はないので、基本は自分の好きなように活けることが花のある暮らしを楽しく続けていくことにも繋がります。
でも、ほんの少しのセオリーを知っていると、さらにお花を活けることが楽しくなり、コーディネートの幅も広がります。日常的にさりげなく飾る以外にも、旬のお花を自分へのご褒美としてちょっと贅沢に飾ったり、家族のお誕生日などイベントの時は奮発してみたりとメリハリをつけると、お料理することと同じくらいライフスタイルの一部として楽しめるのではないでしょうか。
今回は、取り入れやすいセオリーをご紹介いたします。
①お花と花瓶の長さ
一般的に、花瓶の長さと花瓶から出ている花の長さの比率は、1:1.5だとバランスが
良いといわれています。特にシンプルに挿す時などちょっと意識してみてください。
②お花を足して活けていく場合の奇数ルール
同じ花を数本飾りたい場合、1,3,5…本と奇数で組み合わせていくと、三角形、五角形のように立体的な空間が生まれ、風が吹き抜けるような動きがでてきます。
逆に2,4…本の組み合わせは、平面的で静のイメージに・・・。
③お花の向きは、自分を太陽にたとえて活けてみる
花の形は様々ありますが、ヒマワリやダリアのような平たい花を全部同じ方に向けて挿してしまうと、平面的で何か不自然な気がしませんか。
そんな時は自分を太陽に見立て、自然界の植物が太陽に向かって成長するようなイメージで活けてみてください。
時には向きを変えて、花達が向かい合って会話しているような雰囲気でアレンジしてみるとお花畑にいるような景色が浮かんできますよ。
慣れてきたら、身近にある葉物や蔓・穂物、さらにはメインの花を支えるような丸いお花(例えばアジサイなど)と組み合わせてみるのもおすすめです。
花畑から摘んできたような田園風ブーケの出来上がりです。
④最後まで愛でる
お水替えをしながら茎を切り戻していくと、次第に丈も短くなってしまいます。
そうしたら、身近にある小さな器…ジャムビンやマグカップ、一輪差しなどに挿し替えたり、花顔だけを使ってグラスやお皿に浮かべて水中花にしたり、そのまま散らせばテーブルコーディネートの一部にもなります。
乾き花(ドライフラワー)にできる花もありますので、変わりゆく表情を最後まで楽しみながら、お花とお付き合いしてみてはいかがでしょう。
<今回使用した花材>
ヒマワリ「ビンセントネーブル」、グリーンアナベル、グリーンスケール、トケイソウ